未経験から学ぶデータサイエンスの応用:ECサイトの「おすすめ」はどうやって決まる?レコメンドシステム基礎解説
異業種・異職種からデータサイエンティストへのキャリアチェンジを目指す皆様、こんにちは。
データサイエンスと聞くと、高度な数学やプログラミングをイメージし、少し難しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、データサイエンスは私たちの生活の非常に身近なところで活用されています。
この記事では、皆様が普段から目にしているであろう、ECサイトや動画配信サービスにおける「おすすめ」機能、つまりレコメンドシステムを例にとり、データサイエンスがどのように応用されているのかを分かりやすく解説いたします。技術的な前提知識がない方でも、その基本的な考え方や仕組みを理解できるよう丁寧にご説明しますので、ぜひ読み進めてみてください。
レコメンドシステムとは?何がすごいのか?
レコメンドシステムとは、文字通り、ユーザーの興味や好みに合った商品やコンテンツなどを「おすすめ」するシステムのことです。ECサイトで「あなたへのおすすめ」と表示されたり、動画配信サービスで「おすすめの動画」が提示されたりするのは、このレコメンドシステムが働いているおかげです。
なぜレコメンドシステムが重要なのでしょうか?
ユーザーにとっては、自分が探しているものや、興味を持ちそうなものを効率よく見つけられるようになります。これは、情報過多の現代において非常に大きなメリットです。
一方、サービス提供側にとっては、ユーザーの満足度を高め、サイトの滞在時間を延ばし、結果として商品購入やサービス利用につながる確率を高めることができます。膨大なアイテムの中から、一人ひとりのユーザーに合わせた情報を提供できる点が、レコメンドシステムの「すごい」ところなのです。
レコメンドシステムの主な種類
レコメンドシステムにはいくつか代表的な手法があります。ここでは、その中でも分かりやすい二つの種類をご紹介します。
コンテンツベースフィルタリング
この方法は、ユーザーが過去に「良い」と感じたアイテム(例えば、購入した商品や高く評価した映画など)と「似ている」特徴を持つアイテムをおすすめします。
例えば、特定のジャンル(例:SF映画)の映画をよく見たり、高く評価したりするユーザーがいたとします。コンテンツベースフィルタリングでは、そのユーザーに「SF映画」という特徴を持つ別の映画をおすすめします。これは、アイテム自体の特徴(ジャンル、俳優、監督、キーワードなど)を分析し、ユーザーの過去の行動履歴から得られたアイテムの特徴と照らし合わせることで実現されます。
協調フィルタリング
協調フィルタリングは、「ユーザー」や「アイテム」同士の関連性に基づいておすすめを行う方法です。「協力的な(協調)フィルタリング」という名の通り、多くのユーザーの行動データを「協力」させておすすめを生成します。
協調フィルタリングには、主に二つの考え方があります。
- アイテムベース協調フィルタリング: 「アイテムAを購入した人は、高確率でアイテムBも購入している」という傾向を見つけ出し、アイテムAを見ている他のユーザーにアイテムBをおすすめする手法です。ECサイトの「この商品を買った人は、こちらも購入しています」という表示がこれにあたります。アイテム間の組み合わせや関連性を分析します。
- ユーザーベース協調フィルタリング: 「ユーザーAと購買履歴や評価の傾向が似ているユーザーBが、アイテムCを高く評価している」という情報をもとに、ユーザーAにアイテムCをおすすめする手法です。趣味嗜好が似ている人たちが良いと感じているなら、自分もきっと気に入るだろう、という考え方に基づいています。
協調フィルタリングは、アイテム自体の特徴に詳しくなくても、ユーザーの行動データさえあれば機能するという利点があります。ただし、新しいアイテムや、あまり購入・評価されていないアイテムについてはおすすめしにくい、という課題もあります。
未経験者でもイメージできるレコメンドの仕組み(超入門)
では、これらのレコメンドシステムが、具体的にどのように動いているのか、未経験者の視点からイメージしてみましょう。難しい数式やアルゴリズムは使いません。
- ユーザーの行動データを集める: まずは、ユーザーが「いつ、何を、どれだけ、どのように」利用したか、といったデータを収集します。ECサイトなら「どの商品を閲覧したか」「カートに入れたか」「購入したか」「レビューを書いたか」、動画配信サービスなら「どの動画を再生したか」「途中で停止したか」「最後まで見たか」「評価したか」など、様々な行動データが対象になります。
- データから傾向や関連性を見つける: 集めた膨大なデータから、「どのようなユーザーが、どのようなアイテムに興味を持つ傾向があるか」「特定のアイテムと別のアイテムは一緒によく購入されるか」といった関連性や傾向をデータ分析の手法を使って見つけ出します。 例えば、「ダイエットに関する本を購入した人は、健康食品も購入する傾向がある」といったパターンや、「Aという映画に5つ星を付けた人は、Bという映画にも高い評価を付けていることが多い」といったユーザー間の類似性などを、データに基づいて計算します。
- ユーザーに最適なアイテムを提示する: 見つけ出した傾向や関連性に基づき、目の前にいるユーザーの過去の行動や、類似する他のユーザーの行動を考慮して、そのユーザーが次に興味を持ちそうなアイテムを選び出し、おすすめとして表示します。
データの収集・分析・提示という一連の流れが、レコメンドシステムの基本的な仕組みです。データサイエンティストは、この仕組みをより正確に、より効果的にするために、どのようなデータを使い、どのような分析手法を適用するかを設計・実装・評価します。
レコメンドシステムとデータサイエンティスト
レコメンドシステムは、ユーザーの行動データという「情報」を分析し、ユーザーにとって価値のある「おすすめ」という形に変える、データサイエンスの代表的な応用例です。
データサイエンティストは、このようなシステムの裏側で、データの収集から始まり、分析、そして最終的なモデル(おすすめを生成する仕組み)の開発・改善までを行います。ユーザーの行動を予測したり、アイテムの特徴を分析したりと、様々なデータ分析スキルが活かされます。
もし、あなたがデータサイエンスの応用に興味を持ったなら、レコメンドシステムのような身近な事例から入るのも良い方法です。これらの仕組みの基礎を理解することは、データサイエンスが「何のために、どのように使われているのか」を知る第一歩となります。
まとめ
この記事では、ECサイトなどでよく見るレコメンドシステムを例に、データサイエンスの応用例をご紹介しました。レコメンドシステムは、ユーザーの行動データから傾向を分析し、一人ひとりに合った情報を提供するデータサイエンスの力強い応用の一つです。
コンテンツベースフィルタリングや協調フィルタリングといった手法はありますが、根底にあるのは「データから関連性を見つけ、ユーザーに価値を提供する」という考え方です。
未経験からデータサイエンスの世界に飛び込む際、具体的な応用例を知ることは、学習のモチベーションを保ち、自分が将来どんな仕事に携われるのかをイメージする上で非常に役立ちます。もしレコメンドシステムに興味を持たれたなら、次はこれを実現するための基本的なデータ分析手法や、Pythonといったプログラミング言語の学習に進んでみるのも良いでしょう。
あなたのキャリアチェンジへの一歩を、データサイエンスの身近な応用例から始めてみませんか。