異業種から目指すデータサイエンティスト:データを「見せる」可視化スキル習得への道
異業種・異職種からデータサイエンティストを目指される皆様、こんにちは。
「キャリアチェンジtoデータサイエンティスト」は、未経験からこの魅力的なキャリアへの第一歩を踏み出す皆様を応援しています。データ分析の重要性は理解しているけれど、技術的な知識がゼロでどこから始めれば良いか分からない、数学や統計学に苦手意識がある、といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
特に、現在の職場でデータを扱う機会が少なかった方にとって、「データサイエンティスト」という言葉には技術的な壁を感じるかもしれません。しかし、ご安心ください。データサイエンティストになるための道のりは、着実にステップを踏めば決して不可能ではありません。
今回は、そんな未経験の皆様がデータサイエンティストを目指す上で、まず身につけておきたい、そして学習の最初の一歩としても非常に有効なスキルの一つである「データの可視化」に焦点を当ててご紹介します。
なぜデータサイエンティストに「データの可視化」スキルが必要なのか?
データサイエンティストの仕事は、単にデータを分析して終わりではありません。分析で見つかった洞察や結果を、ビジネスの意思決定に活かせるように、分かりやすく伝えることが非常に重要です。
例えば、あなたが会社の売上データを分析して「A商品のプロモーションがB商品の2倍の効果があった」という結論を得たとします。この結論を、数字の羅列だけで報告しても、聞く側(経営層や他部署の担当者など)はすぐに理解できないかもしれません。しかし、これをグラフや図にして「プロモーション期間中のA商品とB商品の売上推移を比較した折れ線グラフ」として見せれば、一目でその効果の違いを理解してもらうことができます。
このように、データをグラフや図にすることで、データの持つ意味や分析結果のポイントを、専門知識がない人にも直感的に理解してもらえるようにすることを「データの可視化」と呼びます。データサイエンティストは、高度な分析を行うだけでなく、その結果をステークホルダー(関係者)に正確かつ分かりやすく伝えるために、可視化スキルを使いこなす必要があるのです。
データの可視化とは具体的に何をすること?
データの可視化とは、数値データやカテゴリーデータなどを、棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、散布図、ヒートマップといった様々な図やグラフを用いて視覚的に表現することです。
これにより、データの中に潜むパターン、トレンド、異常値などを人間が目で見て捉えやすくなります。例えば:
- 時系列データ: 売上や株価の推移などを折れ線グラフにすることで、上昇・下降のトレンドや季節性を把握できます。
- 比較: 複数の商品の売上や、異なる施策の効果などを棒グラフや円グラフで比較できます。
- 関係性: 身長と体重の関係などを散布図でプロットすることで、相関があるかを確認できます。
- 分布: ある商品の購入金額の分布をヒストグラムで見ることで、どのような価格帯で最も買われているかが分かります。
これらの可視化は、データ分析の初期段階で行われる「探索的データ分析(EDA: Exploratory Data Analysis)」においても非常に重要な役割を果たします。データを様々な角度から可視化することで、分析の方向性を定めたり、仮説を立てたりすることに繋がります。
未経験者がデータ可視化を最初に学ぶメリット
データサイエンスの学習領域は多岐に渡りますが、なぜ未経験の皆様にとって「データの可視化」が最初の一歩としてお勧めできるのでしょうか?
- 成果が見えやすい: コードを書いてエラーと格闘するだけでなく、実際にグラフが表示されるという目に見える成果が得やすいのが可視化です。「動いた!グラフができた!」という成功体験は、学習のモチベーション維持に繋がります。
- 比較的取り組みやすい: 高度な統計知識や複雑なアルゴリズムの理解がなくても、基本的なグラフ作成から始めることができます。
- 他の学習への繋がり: 可視化を行う過程で、データ形式の扱い方、データの整形方法、プログラミングの基本(特にPythonやR)といった、データサイエンスの他の重要な基礎スキルを自然と身につけることができます。また、可視化を通じてデータを深く理解することは、その後の統計分析や機械学習モデル構築の精度向上にも役立ちます。数学や統計学が苦手でも、まず目でデータの特徴を掴むことから始められるのは大きなメリットです。
データ可視化のためのツール
データ可視化を行うためのツールはいくつかあります。未経験の方は、まずご自身のスキルレベルや目的に合ったものから始めて、徐々にステップアップしていくのが良いでしょう。
- Excelなどの表計算ソフト: 普段お仕事でExcelを使っている方にとっては、最も身近なツールです。基本的なグラフ作成機能が備わっており、簡単なデータの傾向を掴むのに役立ちます。ただし、大規模なデータや複雑なグラフの作成には限界があります。
- BI(ビジネスインテリジェンス)ツール: Tableau(タブロー)やPower BI(パワービーアイ)などが有名です。プログラミングの知識がなくても、直感的な操作で高度なダッシュボードやインタラクティブなグラフを作成できます。ビジネスの現場では広く活用されています。
- プログラミング言語(Python, R): データサイエンティストとしては、PythonやRといったプログラミング言語を使った可視化が必須となります。これらの言語には、豊富な可視化ライブラリ(機能をまとめたもの)があり、より柔軟かつ高度なグラフを作成したり、データ分析のコードと連携させて効率的に作業を進めたりすることが可能です。
未経験からデータサイエンティストを目指す場合、最終的にはPythonやRを使った可視化スキルを習得することを目指しましょう。BIツールの経験も、データをビジネスに活かすという点で非常に価値があります。
Pythonを使ったデータ可視化入門
ここでは、データサイエンティストが最もよく使う言語の一つであるPythonを使ったデータ可視化の最初の一歩をご紹介します。Pythonには、Matplotlib(マットプロットリブ)やSeaborn(シーボーン)といった強力な可視化ライブラリがあります。
Pythonをまだお使いでない方は、まずPythonのインストールから始めましょう。Anaconda(アナコンダ)というデータ分析に必要なものが一通りまとまった配布版を利用すると便利です。次に、Jupyter Notebook(ジュピターノートブック)やGoogle Colaboratory(グーグルコラボラトリー)のような対話的にコードを実行できる環境を用意します。
ここでは、Pythonの代表的な可視化ライブラリであるMatplotlibを使った簡単な棒グラフの作成例を見てみましょう。
まず、必要なライブラリをインポートします。
import matplotlib.pyplot as plt
import pandas as pd
matplotlib.pyplot
はMatplotlibの機能を使うための部分で、plt
という短い名前で使えるようにしています。pandas
はデータを扱いやすくするためのライブラリです。今回は簡単な例なので直接は使いませんが、実際のデータ分析では必須となります。
次に、グラフにしたいデータを用意します。今回は簡単なサンプルデータを使います。
# サンプルデータ:商品の売上
products = ['A', 'B', 'C', 'D']
sales = [150, 230, 100, 180]
products
というリストには商品の名前、sales
というリストにはそれぞれの売上データが入っています。
このデータを使って棒グラフを作成しましょう。
# 棒グラフの作成
plt.bar(products, sales)
# グラフにタイトルとラベルを追加
plt.title('商品別売上')
plt.xlabel('商品')
plt.ylabel('売上(万円)')
# グラフを表示
plt.show()
plt.bar(products, sales)
で、products
を横軸、sales
を縦軸にした棒グラフを作成します。plt.title()
,plt.xlabel()
,plt.ylabel()
で、グラフのタイトル、横軸のラベル、縦軸のラベルを設定します。plt.show()
で作成したグラフを表示します。
これを実行すると、商品A, B, C, Dの売上を比較する棒グラフが表示されます。
(※実際にはコード実行環境でグラフが表示されます)
このように、数行のコードで簡単なグラフを作成できます。まずはこのような基本的なグラフ作成から始め、徐々に折れ線グラフ、散布図など、様々な種類のグラフに挑戦していくのが良いでしょう。
さらに、Seabornライブラリを使うと、より少ないコードで洗練されたデザインのグラフを作成したり、複雑なデータを分かりやすく表現したりすることができます。Pandasライブラリと組み合わせることで、CSVファイルからデータを読み込んで、そのままグラフを作成することも簡単に行えます。
データ可視化スキルの学習リソースと進め方
Pythonを使ったデータ可視化を学ぶためのリソースは豊富にあります。
- オンライン学習プラットフォーム: Coursera, Udemy, Progate, ドットインストールなど。Pythonの基本から始まり、MatplotlibやSeabornを使ったデータ分析・可視化を学べる講座が多く提供されています。動画を見ながら手を動かせるので、初心者の方にお勧めです。
- 書籍: Pythonやデータ分析に関する入門書の中に、データ可視化の章が設けられていることが多いです。体系的に学びたい場合に有効です。
- 公式ドキュメントやチュートリアル: MatplotlibやSeabornの公式サイトには、詳しいドキュメントやチュートリアルが掲載されています。基本的な文法を理解した後に参照すると、より深く理解できます。
- Web上の記事やブログ: 特定のグラフの作成方法や、データ可視化のアイデアなど、実践的な情報を手軽に入手できます。
具体的な学習の進め方の一例としては:
- Pythonの基本を学ぶ: 変数、リスト、条件分岐、繰り返し処理、関数の定義など、基本的な文法を理解します。(目安:1〜2週間)
- Pandasの基本を学ぶ: データの読み込み、表示、基本的な操作方法を学びます。これにより、CSVファイルなどのデータをPythonで扱えるようになります。(目安:1週間)
- Matplotlibの基本を学ぶ: 棒グラフ、折れ線グラフ、散布図など、基本的なグラフの作成方法を学びます。上記で紹介したコード例などを参考に、実際に手を動かしてみましょう。(目安:1〜2週間)
- Seabornを学ぶ: Matplotlibよりも高レベルなAPIを提供しており、より表現力豊かなグラフを簡単に作成できます。統計グラフなども含め、様々なグラフ作成方法を学びましょう。(目安:1〜2週間)
このように、各ステップを順番に進めていくことで、着実にデータ可視化スキルを身につけることができます。
学んだスキルを実践してみよう
チュートリアルやサンプルコードをなぞるだけでなく、学んだスキルを使って実際に様々なデータを可視化してみることが非常に重要です。
政府統計の総合窓口(e-Stat)やKaggle(カグル)のようなプラットフォームでは、様々な種類のデータセットが公開されています。興味のあるデータセットを選んで、学んだ可視化手法を適用してみましょう。例えば、都道府県別の人口データ、世界の気温変化データ、映画の興行収入データなど、身近なテーマのデータから始めるのも良いでしょう。
どのようなグラフがデータのストーリーを最もよく伝えられるか?どうすれば見る人が一目で理解できるか?といった視点を持ちながら、試行錯誤することが、実践的なスキルを高める最良の方法です。
まとめ:可視化スキルはデータサイエンティストへの強力な一歩
異業種・異職種からデータサイエンティストを目指す皆様にとって、データ可視化スキルは、分析の入り口として、また分析結果を「見せる」ための強力な武器となります。数学や統計学に苦手意識があっても、まず視覚的にデータを捉えることから始められる可視化は、データサイエンスの世界への最初の一歩として非常にお勧めです。
Pythonを使った可視化は、最初は難しく感じるかもしれませんが、ご紹介したように段階的に学ぶことで必ず習得できます。オンライン講座や書籍、そして何よりも「実際に手を動かして試す」ことを通じて、データ可視化の楽しさと重要性をぜひ体感してください。
このスキルを磨くことは、データサイエンティストとしてのキャリアを築く上で、あなたの大きな強みとなるでしょう。未経験からの挑戦を、データの可視化から始めてみませんか。応援しています。