未経験から理解するデータ分析:データサイエンティストの仕事の流れと入門ツール解説
データサイエンティストというキャリアに興味をお持ちの皆様、こんにちは。異業種・異職種からデータサイエンティストを目指す方を応援する当サイトへようこそ。
「データサイエンティストって、具体的にどんな仕事をするんだろう?」「データ分析って難しそうだけど、実際は何をやるんだろう?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。特に、これまでデータ分析とは縁遠いお仕事をされてきた方にとっては、データサイエンスの分野は未知の世界に映るかもしれません。数学や統計学に苦手意識があるという方もいらっしゃるでしょう。
しかし、ご安心ください。データ分析の仕事は、一部の天才だけができる特別なものではありません。基本的な「流れ」と「考え方」、そしてそれを助けてくれる「ツール」を理解すれば、未経験からでも十分に取り組める分野です。
この記事では、データサイエンティストの仕事の核心である「データ分析」が、どのような手順で進められるのかを、未経験の方にも分かりやすく解説します。また、それぞれのステップでよく使われる「入門ツール」もご紹介します。これを読めば、データサイエンティストの仕事の具体的なイメージが掴めるはずです。
データ分析の基本的な流れとは?
データ分析と聞くと、いきなり複雑な計算やグラフ作成を想像するかもしれませんが、実際にはいくつかの段階を経て進められます。一般的なデータ分析のプロジェクトは、大きく分けて以下の5つのステップで構成されます。
- 目的設定(Problem Definition)
- データ収集(Data Collection)
- データ前処理(Data Preprocessing)
- データ分析・モデリング(Data Analysis & Modeling)
- 結果の評価・解釈・報告(Evaluation, Interpretation & Reporting)
それぞれのステップについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
ステップ1:目的設定(Problem Definition)
データ分析は、単にデータを眺めることではありません。常に「何のために分析するのか?」という明確な目的が必要です。ビジネス課題の解決、サービスの改善、新たな知見の発見など、目的によって収集すべきデータや分析手法が全く異なります。
この最初のステップは、データサイエンティストがビジネス側の担当者と密接にコミュニケーションを取りながら行う非常に重要な部分です。「売上を伸ばしたい」「顧客の離脱率を減らしたい」といった漠然とした要望から、「どのような顧客が離脱しやすいか?」「特定のプロモーションの効果はどの程度か?」といった、データで答えられる具体的な問いに落とし込む作業を行います。
未経験の方にとっては、データ分析技術そのものよりも、この「ビジネス課題を理解し、分析テーマを設定する力」が、これまでの異業種経験を活かせる最初のポイントになることが多いです。
ステップ2:データ収集(Data Collection)
分析目的が定まったら、それに必要なデータを集めます。社内のデータベース、Webサイトのアクセスログ、外部の公開データ、アンケート結果など、様々なソースからデータを収集します。
データサイエンティストは、必要なデータがどこにあるか、どのように取得できるかを知っている必要があります。場合によっては、データベースからデータを抽出するためにSQL(エス・キュー・エル)という言語を使ったり、Web上から情報を自動的に取得するためにPython(パイソン)というプログラミング言語を使ったりすることもあります。
- 入門ツール例:
- SQL: データベースからデータを抽出するための言語。データの検索、抽出、結合といった基本的な操作は、比較的シンプルで習得しやすいです。多くの企業でデータがデータベースに格納されているため、必須のスキルと言えます。
- Python/R: より複雑なデータ収集や、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じたデータ取得などに使われます。最初はSQLから始めるのがおすすめです。
ステップ3:データ前処理(Data Preprocessing)
収集したデータは、そのまま分析に使える状態であることは稀です。欠損値(データが抜けている箇所)があったり、形式がバラバラだったり、間違ったデータが含まれていたりします。これらの問題を修正し、分析に適した形にデータを整える作業がデータ前処理です。
このステップが、データサイエンティストの仕事時間の中で最も多くの割合を占めるとも言われています。データのクリーニング(掃除)、整形、統合、変換など、地道ながらも非常に重要な作業です。データの質が分析結果の質を大きく左右するためです。
- 入門ツール例:
- Python (Pandasライブラリ): データ分析で最も広く使われているプログラミング言語Pythonには、Pandas(パンダス)という非常に強力なデータ前処理用のライブラリ(便利な機能の集まり)があります。データの読み込み、表示、欠損値の処理、データの並べ替えや集計など、表計算ソフトでは難しい複雑な処理も効率的に行えます。
- R (dplyrライブラリなど): Pythonと同様にデータ分析でよく使われる言語です。統計分析に強く、前処理用のライブラリも豊富にあります。どちらを学ぶかは好みや学習リソースで選んで構いませんが、近年はPythonの人気が高い傾向にあります。
数学や統計学が苦手という方も、この前処理段階では主にデータの操作が中心となりますので、まずはツールの使い方を覚えることから始められます。もちろん、データの特徴を理解するために基礎的な統計量は確認しますが、それはツールの機能で簡単に算出できます。
ステップ4:データ分析・モデリング(Data Analysis & Modeling)
前処理を終えたデータを使って、いよいよ本格的な分析を行います。目的(ステップ1で設定したもの)に応じて、データを集計したり、特徴を可視化したり、統計的手法を用いたり、機械学習モデルを構築したりします。
「機械学習」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、最初は既存のライブラリ(便利な機能がまとまったもの)を使って、基本的な手法(例えば、過去のデータから未来を予測する回帰分析や、グループ分けをするクラスタリングなど)を試すことから始められます。重要なのは、様々な分析手法があることを知り、目的に合わせて適切な手法を選択できるようになることです。
- 入門ツール例:
- Python (Scikit-learn, Matplotlib, Seaborn): Pythonには、機械学習モデルを簡単に扱えるScikit-learn(サイキットラーン)、グラフ作成に役立つMatplotlib(マットプロットリブ)やSeaborn(シーボーン)など、強力なライブラリが多数あります。これらのライブラリを使えば、複雑な分析やグラフ作成も比較的容易に行えます。
- R: 統計分析の機能が非常に充実しており、様々な統計モデルやグラフ作成が可能です。
- BIツール (Tableau, Power BIなど): コードを書かずに直感的な操作でデータを可視化したり、基本的な集計・分析を行ったりできるツールです。分析結果を分かりやすく伝えるのに役立ちます。最初はExcelからステップアップしてBIツールを使ってみるのも良いでしょう。
このステップで、統計学や線形代数などの数学的な知識が深く求められる場面が出てきます。しかし、入門段階では、ライブラリの使い方を学びながら、徐々に分析手法の原理や背景にある数学を理解していくという進め方で十分です。ツールが計算そのものは行ってくれますので、まずは「何ができるか」「どう使えば良いか」を知ることから始めましょう。
ステップ5:結果の評価・解釈・報告(Evaluation, Interpretation & Reporting)
分析やモデリングが終わったら、その結果が正しいか(評価)、そしてその結果が何を示しているのか(解釈)を行います。得られた知見や解決策を、分析の依頼者(ビジネス側の担当者など)に分かりやすく報告します。
分析結果がビジネス上の意思決定に繋がるためには、専門的な分析手法の説明だけでなく、「この分析から何が分かったのか」「それはビジネスにどう役立つのか」「次は何をすべきか」といった点を、相手の理解度に合わせて伝えるコミュニケーション能力が非常に重要になります。
分析結果を効果的に伝えるためには、グラフやダッシュボード(複数のグラフなどを一覧表示したもの)の作成が役立ちます。
- 入門ツール例:
- Python (Matplotlib, Seaborn): ステップ4でも触れましたが、グラフ作成に非常に便利です。
- R (ggplot2など): Rも美しいグラフを作成するためのライブラリが豊富です。
- BIツール (Tableau, Power BIなど): インタラクティブな(操作可能な)ダッシュボードを作成し、分析結果を共有するのに非常に有効です。
この報告のステップでは、異業種での経験、特に営業職などでお客様に何かを説明したり提案したりする経験が活かせます。難しい分析結果を、専門知識がない人にも伝わるように「翻訳」する能力は、データサイエンティストにとって不可欠なスキルの一つです。
未経験からデータ分析の世界へ踏み出すには
ここまで、データサイエンティストのデータ分析の基本的な流れと各ステップで使われるツールをご紹介しました。
「やっぱり難しそう…」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご紹介したツールやプログラミング言語は、どれも初心者向けの学習リソースが非常に豊富に存在します。
例えば、PythonやSQLは、オンライン学習プラットフォームなどで基礎から学ぶことができます。最初は簡単なデータの操作や集計から始め、少しずつステップアップしていくのが王道です。数学や統計学も、最初は高度な知識は必要ありません。データ分析の文脈で必要になった際に、関連する部分をピンポイントで学習していくというアプローチも効果的です。
重要なのは、「データ分析の全体像を理解する」ことと、「まずは一歩踏み出して、簡単なデータ操作やツールの使い方に触れてみる」ことです。
今回ご紹介したステップとツールは、データサイエンティストの仕事のほんの一端ですが、この基本的な流れを理解することで、これから何をどのように学習していけば良いのか、具体的なイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
未経験からデータサイエンティストへの道は、決して平坦ではないかもしれませんが、着実にステップを踏み、実践的なスキルを身につけていけば、十分に到達可能な目標です。この記事が、あなたのキャリアチェンジに向けた最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
次のステップとして、まずは気になるツール(例えばPythonのPandasやSQL)の入門に触れてみたり、データ分析の基本的な考え方に関する書籍やオンラインコースを探してみたりすることをお勧めします。
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